本記事では、UNHCRの『Global Trends Report 2024–2025』より、世界の難民・国内避難民(IDPs)・無国籍者の動向を整理し、その背景と政策的含意をわかりやすくまとめました。
1. 背景と報告書の概要
2024年末時点で、UNHCRによると「強制移動を余儀なくされた人々は123.2 百万人」に達し、前年度から6%増(+7百万):contentReference[oaicite:1]{index=1}。これは12年連続の増加で、世界で約67人に1人が強制移動中という驚愕の数字です。
特に懸念されるのは「国内避難民(IDPs)の急増」で、2024年末には73.5 百万人に達し、難民のほぼ2倍に:contentReference[oaicite:2]{index=2}。強制移動の大半は、治安悪化や気候ショックにより一国の中で発生しています。
2. 主な発生原因と地域別傾向
本報告では、以下の地域・国が主な発生地とされています:
- スーダン情勢:2023年の武力衝突により、スーダンで10.8 百万が国内避難、さらに周辺国への難民も多数発生:contentReference[oaicite:3]{index=3}。
- シリア・ウクライナ・アフガニスタン:長期紛争によりそれぞれ13.5、8.8、10.3 百万が強制移動中:contentReference[oaicite:4]{index=4}。
- コンゴ民主共和国・ミャンマー・ハイチ:各地での暴力で国内避難が急増しています:contentReference[oaicite:5]{index=5}。
3. 難民・国内避難民・無国籍者の現状
2024年時点で、UNHCRの管轄下にある難民は42.7 百万人、IDPsは73.5 百万人と、国内避難者が圧倒的多数を占めています:contentReference[oaicite:6]{index=6}。 また、無国籍者も440 万人超と深刻な問題が続いています:contentReference[oaicite:7]{index=7}。
難民の67%は母国付近で庇護を求め、人口比では弱い中低所得国が大多数の負担を担っています(73%):contentReference[oaicite:8]{index=8}。 子ども・女性の比率も高く、難民のうち約40%が18歳未満、女性・少女が50%を占めます:contentReference[oaicite:9]{index=9}。
4. 帰還と解決の動き
2024年に帰還した難民・IDPsは合計約9.8百万人で、うち難民1.6百万・IDPs8.2百万と報告されています:contentReference[oaicite:10]{index=10}。シリア、アフガニスタン、南スーダン、ウクライナなどへの帰還が主ですが、多くのケースで不安定な帰還環境が課題です:contentReference[oaicite:11]{index=11}。
5. 主な課題と今後の展望
資金不足が深刻で、UNHCRの2024年予算への資金調達は前年を下回り、柔軟資金は18%減少:contentReference[oaicite:12]{index=12}。この資金ギャップは2023年で5.2 十億ドルに達し、保護・住居・教育対応の停滞を招いています:contentReference[oaicite:13]{index=13}。
また、気候変動に起因する災害(洪水・干ばつ・熱波など)がIDPの増加要因となっており、強制移動の脆弱性が新たな局面を迎えています:contentReference[oaicite:14]{index=14}。
6. 政策的含意と提言
報告書は以下の重点課題を提起しています:
- <平和構築と紛争対応>:スーダン、ウクライナ、DRCなどの紛争終結を促す努力が不可欠。
- <強制帰還後の支援体制>:住宅支援、土地権保障、雇用・教育へのアクセスを確保。
- <気候対策との連動>:強制移動を減らすために防災・気候適応施策の強化。
- <資金動員の拡充>:開発援助・多国間基金による柔軟資金の維持と増加。
- <中低所得国への支援集中>:難民ホスト国への財政・技術支援、教育・衛生へのアクセス改善。
7. まとめ:今、世界が直面する「人の移動」危機
UNHCR報告は、強制移動が“数値だけの問題”ではなく、平和・気候・人権の複合危機の現れであることを警告します。持続的な解決には、資金・制度・現場対応の3要素が不可欠であり、「誰も取り残さない社会」の実現には国際連携が急務です。
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