国際電気通信連合(ITU)とは?―世界をつなぐ電波の守り手

2025年7月29日火曜日

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スマホで通話ができる。Wi-Fiがつながる。インターネットが地球の裏側とつながる。
これらを「国際的にうまく動かす」ための仕組みを支えているのが、国際電気通信連合(ITU)です。

1. ITUってどんな国際機関?

ITU(International Telecommunication Union)は、国連の専門機関のひとつで、「電気通信・無線・インターネット」など、情報通信技術(ICT)に関する国際的なルールづくりを行う機関です。

本部はスイスのジュネーブにあり、193の国と約900の企業・大学・研究機関などがメンバーになっています。

ITUの歴史は非常に古く、設立はなんと1865年。もともとは電信(モールス信号)の国際的な接続を調整するためにできた組織でした。

2. ITUの仕事とは?

ITUの仕事は主に次の3つの分野に分かれています:

① 無線通信の国際調整(ITU-R)

ラジオ、テレビ、携帯電話、衛星、Wi-Fi… これらがお互いに電波で干渉しないように「周波数」や「通信衛星の軌道」を国際的に割り当てています。

② 通信技術の標準化(ITU-T)

世界中で使えるように、通信やネットの技術の共通ルール(=標準)を決めています。たとえば、テレビ会議や5G通信もITUの標準化が関係しています。

③ 発展途上国への支援(ITU-D)

インターネットや携帯ネットワークが届いていない国や地域をサポートし、ICTの普及を通じて「デジタル格差」をなくすことを目指しています。

3. ITUの大切な役割

今や、社会のあらゆる分野で通信技術が使われています。ITUの役割は次のようなところに活かされています:

  • 災害時に国際通信をつなぐための緊急ネットワークの設計
  • 宇宙の通信衛星の登録や軌道調整
  • IoTやAI、サイバーセキュリティのルールづくり
  • 障がいのある人向けの通信機器開発支援
  • 農村地域のインターネット整備プロジェクト

つまりITUは、「世界が安心してICTを使えるようにするインフラの守り手」といえます。

4. ITUで働くには?どう関われる?

ITUは国連機関なので、特定の国の職員だけでなく、多国籍の専門家が集まっています。ITUに関わるには次のような方法があります:

① ITUの正規職員として働く

  • 国際関係、通信工学、ICT、政策、法律などの専門知識が必要
  • 基本的に英語またはフランス語の高い運用能力が求められる
  • 国連や政府、通信企業、研究所などの職歴があると有利

② インターンやジュニア・ポジションに応募

学部・大学院生でも応募できるインターンシップや若手向け採用があります。ジュネーブやバンコクの地域事務所での機会もあります。

③ ITU加盟国の支援を通じて関わる

日本では総務省や外務省、また大学や通信企業がITUに参加しています。
これらの組織の職員としてITUの会議やプロジェクトに参加するというルートもあります。

④ 学生向けプログラムに参加

ITUは若者向けの国際会議「Generation Connect」や、世界情報社会サミット(WSIS)など、若者がアイデアを発表できる機会も設けています。

5. SDGsとの関わり

ITUの活動は持続可能な開発目標(SDGs)とも密接に関わっています。特に以下の目標と深いつながりがあります:

  • 目標9:産業と技術革新の基盤を作ろう
  • 目標4:質の高い教育をみんなに(ICT教育)
  • 目標5:ジェンダー平等を実現しよう(ICT分野の女性参画)
  • 目標17:パートナーシップで目標を達成しよう

ITUは、デジタル技術をすべての人に届けることで、世界の不平等を縮めようと努力しています。

6. まとめ:ITUは世界をつなぐ「通信の国際調整センター」

インターネット、スマホ、AI、宇宙通信… こうした最先端の技術が安全に、誰でも使えるようにするためには、世界共通のルールが必要です。

ITUはまさにそのルールづくりの中心的存在であり、未来のICTを形作る「舞台裏の国際機関」と言えるでしょう。

技術や国際協力に興味のあるあなたも、将来ITUで活躍することができるかもしれません。


この記事は、ITUの概要を中高生にも理解しやすい形でまとめたものです。国際理解教育、キャリア教育、ICT学習の参考にご活用ください。

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